校長からのお手紙 | letter from the principal

2019.2.14 第247号-3!傾聴!人の話をよく聴こう-

「はいー。オッケー。
〇〇〇ズ!しゅうごー。

はい。実は先週、
このクラスで問題が起きたと、
〇〇コーチから
私は、報告を受けました。

私は皆さんの口から
皆さんの言葉で
先週、どんなことが起きたのか
事実を教えて欲しいと
今、思っています。
はい。先週、
このクラスで何があったの?
誰か教えてくれる?」

生徒達は、目を見開いて
顔を見合わせて静まり返った。

私は上記の質問を投げかける前に
楽しいラグビーのアタックディフェンスの練習で
充分に彼らの心と体をほぐして温めていました。

だから、彼らの心と身体はさっきまで弾んでいたのだから、
きっと誰かの手が挙がるだろうと予想していました。

同時に、私の言葉や表情や態度が
彼らへの圧力となって
彼らが自由に発言する機会を奪わないように心を配っていました。

具体的に言うと
上から怖い顔で
生徒達を見降ろさないように
→なるべく無邪気で
→善良なおじさんの表情で
→眉間にチューリップの花を咲かせるイメージで眉を開いて
→できるだけ口角をあげて
→微笑みをうかべて
→片膝をついて
→目線を彼らの高さまで下げて

答えを待ちました。

A君の手が挙がりました。
「B君とか、C君とかが、
チンパンジーとかハナクソとか
僕をからかった!
僕はそれがすごく嫌だった!」

B君がすぐさま切り返した。
「俺はチンパンジーとは言ってねえ!つーか!」

即座にKコーチがB君を制した。
「B君!今はA君の話を聴こう!
ムラタぐさんは、
たぶん後でB君の話を聴く時間も
作ってくれるから!
今は、A君の話を聴こう!」

私もKコーチに続いて
なるべく穏やかに言葉を重ねました。
「うん。Kコーチ。ありがとう。
B君。ごめんね。
Kコーチが言った通り。
A君の話を最後まで聞いたら
次はB君の話を聴くからね。
ちょっと待っててね。
私は今から犯人捜しをして
その犯人達を責めまくって
吊るし上げたいと、
そう思っている訳じゃないんです。

どうすれば
誰かが嫌な想いをするような
イジメみたいな時間を失くして
みんなで楽しく
ラグビーをする時間を増やせるかを
みんなで考えたいんだよ。

そのために
先週このクラスで何が起きたのか?
先ずは事実が知りたいんです。

みんなの考えや想いも
後からちゃんと聞くからね。

まずは何が起きたのか?
事実を教えて欲しい。

A君。
チンパンジーとかハナクソとか
言われてすごく嫌だったんだよね。
さっき
B君とC君の名前が出ました。
他には誰かいる?」

「あとはD君とE君にも
言われた気がする・・・」

D君が叫ぶ。
「俺はハナクソとは言ってない!
チンパンジーだけだよ!」

私はできるだけ穏やかに
D君の言葉を制して言いました。

「D君、ごめんね。
君の話も後で聴くからね。
今はA君の話を聴こう。
A君は今、嫌だった先週の気分を
想いだしながら
みんなの前で勇氣を出して
それを話してくれているんだ。
これはA君にとっては
とても緊張する場面だよ。
だから
みんなでA君の話を優しく
最後まで聴いてあげよう。
D君の話も後で全部聞くからね。
D君、わかったかな?」

D君「はい。わかりました。」

穏やかに穏やかに。
自分に言い聞かせて私は言いました。

「はい。A君。
君の話を全部聴くよ。
他に言いたいことある?」

A君は真剣な顔で言った。
「僕が、鼻の近くに
手をこうやって近づけた時に
B君が、コイツ、ハナクソ!
ほじってる!きたねー!
って言って
そのボールに触るのやめようぜ!
とか言われて
それでみんなが僕を
ハナクソとかチンパンジー
とか言い出してからかわれた。
僕の指は!
鼻には入ってないのに!」

B君「えー。入ってたよ!」
A君「入ってないよ!」

ムラタぐ
「わかった。わかった。B君は、A君の指が鼻に入ったと思ってるんだね?」

B君「うん」

ムラタぐ「A君は、自分の指は鼻に入ってないと思っているんだね。」

A君「うん。」

ムラタぐ
「でも、B君には指を鼻に入れたと言われて、
ハナクソ、きたねーと言われたんだね。」

A君「はい。そうです。」

ムラタぐ
「はい。よくわかりました。
A君とB君の思っている事が違う。
という事がわかりました。
A君は、鼻に指を入れてないのに
B君に、ハナクソきたねーと
言われて嫌だったと思っている
という事もわかりました。
A君、他に言いたいことはある?」

A君「…。ないです。」

ムラタぐ、なるべく穏やかに
にっこり笑って一息。

「オッケー。
教えてくれてありがとう。
はい。じゃあB君。お待たせ。
ハナクソきたねーと言って
A君をからかった事は
事実ですか?」

B君
「うん。事実。
だけど、ハナクソとは言ったけど
チンパンジーと言ったのは
俺じゃない…」

ムラタぐ、驚いた表情で
責める口調にならないように
注意しつつ
穏やかさを心がけて・・

「おお、そうなんだ。なるほどー。
A君をからかった人達には、
チンパンジー組と、
ハナクソ組がいるんだな。

チンパンジーと言ったひとー!
手を挙げてー。

はい。わかりました。

ハナクソと言ったひとー!
手を挙げてー。

はい。わかりました。」

B君とC君はハナクソ組。

D君とE君は、チンパンジー組。

その時 Y君が手を挙げて言った。
「寒くなってきたから
上着着て来ていいですか?」

私は笑顔で答えた。
「ごめん!確かに寒いよね。
ありがと。教えてくれて。
オッケー、寒い人は
上着着てください。」

走り出すY君。確かに寒い。

ムラタぐ
「ようし!今から、もう一回
ラグビーやります。
さっきのアタックディフェンス。
みんなで元気に楽しく走る。
その後でまた続きをやろう!」

私は寒くなって来た身体を温め
生徒達の重くなった気分を晴らすべく
いったんラグビーを再開しようと決断しました。

心も体も温めてから
本題に入ろうと思ったのです。

A君は真剣な表情で
楽しそうにラグビーボールを抱えて
走っていました。

さっきまで
ふてぶてしい顔だったB君も、
神妙な顔だったC君もD君もE君も、
無邪気に楽しそうに走っていました。

私は、彼らを見守りながら
やっぱり、ラグビーっていいなー
邪気を浄化する働きがあるよなー
と感じていました。

「はいー。オッケー。
〇〇〇ズ!しゅうごー。
やっぱ、ラグビーって楽しいなー」

生徒達は皆「たのしー!」という表情で頷いてくれました。
にっこり笑って私も言いました。

「はい。そうなんだよ。
だからさー。
この楽しいラグビーの時間をさー
もっと増やそうぜー!

先週みたいにね、
誰かが誰かをからかって
嫌な想いにさせちゃうのとかさー
もうやめたいんだよねー。

どうやったら
楽しいラグビーの時間が増えるか?
みんなで考えようぜー。」

なるべく詰問口調や責める調子にならないように。
上から怖い顔で生徒達を見降ろさないように。

なるべく無邪気で
善良なおじさんの表情で
眉間にチューリップの花を咲かせて
私は言いました。

「はい。というわけで
さっきの続きやります。
チンパンジー組のD君に質問。

君は、なぜ…
A君にチンパンジーって
言っちゃったのかな?」

D君
「チンパンジーは、
先週に始まったことじゃなくて、
前にみんなでA君のことを
チンパンジーって言って
からかってちょっと楽しかったら
ついその流れっていうかで
また言っちゃって・・」

ムラタぐ
「なるほどー。
チンパンジーは前からなんだ。
それで楽しかったから、
ついまた言っちゃったんだね。」

D君「そうです。」

===

ここまでの長文を読んでくださった読者の皆様、
本当にどうもありがとうございます。

上記は先日、実際にラグビースクールの授業中に
私と生徒達で交わした会話内容をベースにして制作した
ノンフィクション的な私のフィクションです。

登場する人物と実在する人物は一切関係がありません。

さて、ここまで生徒達の話を
傾聴できたら折り返し地点。

実は、この後
最後のゴール地点では、
感動的なシーンがやって来ます。

信じられない事に
B君もC君もD君もE君も、
A君に「ごめんね」と自発的に謝り
A君もひとりひとりに
「うん。どんまい。」
とにっこり笑顔で返して
ノーサイドの握手をしたのです。

修復不能かと思われた、
いじめた側といじめられた側の
当事者全員が謝って握手して
仲の良い友達同士に戻りました。

我ながらマジかー
この展開はドラマチックすぎだろー
と自分でも感心しました。

いや、これは私ではなく、
ラグビーの神様の成せる業かなとも思います。

ラグビーの神様に
心から感謝したいです。

さて、ここで突然ですが
クイズの時間です。

この後、どんな展開で
この物語は、奇跡のノーサイドの瞬間まで漕ぎつけるのでしょうか?

①この後、鬼のムラタぐに豹変!
激怒して生徒達を叱り怒鳴りまくる。

②この後、ムラタぐ劇場が開演!
弁舌爽やかに生徒達を褒めまくる。

③この後、ムラタぐから質問!
さらに傾聴し続ける。
小話挟んで最後にポツリと独り言。

④この後、かみさま降臨!
ラグビーの神様が天から
降りてきて助けてくれる。

正解は?

(次号に物語は続きますが、答えはこのお手紙の冒頭に書いておきました^_^)

冗談はさておきまして…

もし皆さんが上記の
フィクションのような場面ではなく
最初のイジメの発端の現場に
遭遇してしまったら
どう対応されますか?

実際に今回の現場で
そばにいた学生コーチ達は
何も出来なかったそうです。

二人とも真面目で誠実な性格です。
何かしなければと思ったけど
叱りとばしてその場をおさめても
学校などのラグビースクール以外の場で
いじめが続く可能性もあり
そこまでは目が配れないからなどと
躊躇して動けなかったそうです。

最初は、子供達がよくやる「ふざけ合い」
「からかい合い」だったそうです。
いつのまにかエスカレートして
一線を越えて一対多のイジメのような感じになってしまっていたそうです。

私も大学生の頃に
同じ状況で何か出来たかと言うと
たぶん出来なかったと思います。

もし自分が…

子供として
いじめ現場に遭遇したら…

学生コーチとして、
いじめ現場に遭遇したら…

あるいは
学校の教師として
いじめ現場に遭遇したら…

あるいは
いじめ側の子の保護者として
いじめ現場に遭遇したら…

あるいは
いじめられ側の子の保護者として
いじめ現場に遭遇したら…

私も現在3歳の愛娘がいます。
彼女が成長して
学校でいじめ側の子になったり
いじめられ側の子になったりして
その現場に遭遇してしまったら…

他ならぬ、愛する我が子です。
胸が張り裂けて死んでしまいそうです。
我を忘れて激怒してしまうかもしれません。

いじめによる
子供の自死のニュースを見ると
本当に心が痛みます。

いじめの加害者も被害者も
出さないようにするためには
私達はどうすればいいのか?

いつか来るかもしれない
その時のために
その場面を想起して
どう関わるか
お子様と一緒に考えて
頂きたいのです。

(次号に続く)

東京セブンズラグビースクール
校長 村田祐造