校長からのお手紙 | letter from the principal

2018.8.21 第223号-東北タグラグビー大会2018遠征レポート 最終章〜練習は試合のように試合は練習のように

東北タグラグビー大会2018
年齢制限なしのチャンピオンカップ決勝戦。
東京SRSスーパーライオンズvs東北スクール中学生B。

先制したのは、東北スクール中学生B。
取られたら取り返す。
よく食らいついていくスーパーライオンズ。

息詰まる接戦。
両チームとも守備がいい。
なかなか点が入らない。

ゴールライン間際まで両チームが攻め入る。
守備側のチームがなんとか守りきる。

攻撃チームの応援団が「あー」とため息をつく。
同時に守備チームの応援団が
「ナイスディフェンス!」と盛り上がる。
重苦しい展開。

拮抗した展開を破ったのは
東北スクール中学生B。
ブラインドサイド(狭いスペース)への
パスダダミーからの奇襲攻撃。

敵ながら天晴。
見事なアイディアとスピードの奇襲だった。

反撃するスーパーライオンズ。
攻めあぐねているうちに
残り時間は1分を切った。

この時点のスコアは、
東京SRSスーパーライオンズ 6対8 東北スクール中学生B

残り20秒とロスタイム。
相手ボールとなった。
最後の1プレイである。

私達は、もうこれ以上得点を許したら
敗北が決定的になる。

私達が勝つためには…

守備で圧力をかけて
相手にミスをさせて
こぼれたボールを先に奪って
素早くカウンターアタックをしかけて
しかもゴールラインのまん中に
スーパートライを決めて
3点をもぎ取って
勝ち逃げする…

漫画のような劇的なシナリオ。
そこに一縷の望みをかける。

必死に前に出る。
タグをとりまくる我が軍の選手達。
その姿に私達は胸が熱くなる。

両チームの声援が飛び交う。

その刹那、相手チームがパスミス!
ボールを後ろにこぼれた。

その落ちたボールに
素早くK君が反応した。

やった!
目の前にチャンスボール!

楕円球のいたずら?
大逆転のチャンスが文字通り
まんまと転がり込んで来た!

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

ボールとゴールラインの間には
もう誰もいない!

サヨナラ大逆転!
スーパートライ!
勝利への道が突如として
出現したのである。

応援する私達にとっては
待ちわびた「トキメキの瞬間」であった。

東北の皆さんにとっては
「マサカの瞬間」だ。

しかし、そのトキメキはため息に変わり
マサカは安堵と歓喜に変わった。

Kくんは、そのボールを手にできず
弾いて前に落としてしまったのである。

ノックオンの判定のホイッスル。
試合終了のベル。
同時に鳴り響いた。

あわや大逆転ならず・・

6対8の惜敗。
勝てなかった。
惜しかった。

準優勝。

呆然自失。
言葉なく肩を落とす選手達。
私達は拍手を送った。

「準優勝!よくやった。しかし、優勝するめには何かが足りなかったんだ。そこを考えて練習を重ねよう。そして、また来年来よう。」

あわやサヨナラ大逆転のトライのKくんに私はこっそり質問した。

「Kくん!最後のプレー、惜しかったね。うまくピックアップできたらなあ。大逆転トライだったかも。」

「あたま、まっしろで覚えてないです」

「そうか。惜しかったよ。いい反応だった。ところでさ、ああいう、こぼれ球を拾うときのスキルって前に教えたことあるけど、覚えてる?」

「はい。ボールを跨いでノックオンしないように前の手でボールを前から添えて両手で拾う。」

「おお!よく覚えているね!すごいじゃん。
 でも、そのスキル、あの瞬間できた?」

「できなかった。ボールを跨がずに
 手でとりにいっちゃって前にはじいちゃいました。」

「うん、あの土壇場で無意識的に自然に実現できるレベルまでスキルを磨くことをスキル練習っていうんだよ。
 頭では分かることは大事なんだけど。
 頭で分かっているけど土壇場で自然に使えないスキルはまだ身に付いたスキルとは言えないんだ。惜しかったなあ。
でも、Kくんはまだ練習が足りないだけだから大丈夫。それが分かって良かったじゃん。ドンマイだよ。
 またピックアップの練習しような。」

「はい。やります!」

「今日の試合のような緊張感と真剣さでいつも練習しようね」

練習は試合のように。
試合は練習のように。

Kくんは悔しい負けから
身をもってその言葉を学んだのでした。

このように
私達には負けたからこそ
失敗したからこそ、痛烈に学べたことが
たくさんありました。

帰りの新幹線では、なぜ勝てなかったのか?
どうすれば次は勝てるか?というテーマでみんなで
話し合いました。

準備する力、心の力、ラグビーのスキル、体力、試合の経験…。

結局、すべてが
あと少し足りなかったのです。

勝ちに不思議の勝ちあり。
負けに不思議の負けなし。

少年ラグビーの指導者としては、最後に惜敗して本当によかったなと思います。

下手に初出場で優勝なんかして、今の段階で満足して慢心するよりも、負けて100倍たくさんいろんな事を痛烈に学んだはずだからです。

閉会式。
銀色の準優勝のメダルを首にぶら下げたキャプテンのハッシーが、東北大会の関係者全員の前で私達の気持ちを見事に代弁してくれました。

「東北の皆さん、素晴らしい大会をありがとうございました。
 今年は準優勝できて、嬉しさもありますが、悔しいです。
 来年こそは優勝します。」

(了)

東京セブンズラグビースクール
校長 村田祐造